兵庫県釣連盟
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しおさい

清流のビート「アユ」  平成6年7月号掲載

 夏の風物詩になっているアユの友釣り−先月から待ちに待っていたアユ党は解禁前夜は、胸の高鳴りで眠れない程興奮するそうだ。そして、この清流のシーズン数ヵ月は磯の猛者も、サーフ野郎も「本業」を「休竿」長竿に替えて浮気の「快竿」にドップリ浸かるのである。

さて、このアユ、北は北海道から、南は九州の南端に及ぶ各河川に広く分布し、韓国や台湾、中国にも多少分布しているが、まずメードイン・ジャパンの魚と言っていい程、日本人にぴったり、「古事記」や「日本書紀」にも登場している。そのひとつに神武天皇が即位前の神日本磐余彦命(やまといわれひこのみこと)として、和歌山県から奈良県の方へ進軍中、八咫烏(やたのからす)の導きで険しい山を越え、吉野川下流に着いた時、川に筌(うえ)=竹で編んだカゴ状の捕魚器=を仕掛け魚を捕っている人に出会った・・と記されている。そして命が「お前は誰か」と聞かれたところ「私は土地の者で贄持(にえもつ)の子でございます」と答えたそうだが、贄持の子とはこの土地の鵜飼の始祖であったことからも、その当時からアユを捕っていたものだと思われる。

これほど古くから日本人に親しまれたアユだが、現在のように友釣りができるようになるまでには1人の博士に並々ならぬ苦労のお陰といえるだろう。それは瀬田川付近の船つき場でアユのあめ煮を買った博士−。琵琶湖にアユの親はおらん、という商人の言葉に疑問を持って「親にならない動物はこの世にはいないはず」と調べた結果、親になっている小型−成長しないのは栄養不足と、それから10年余り、小アユの神秘のナゾに挑戦「学者の物好き」といろいろバカにされ、からかわれたりもしたが、多摩川に放流した稚アユが見事に育成、30センチ級を釣り上げた釣り人も現れ、「学者の物好き」をあざ笑っていた漁業者もすっかり恐縮したようだ。その後海産稚アユも人工的に良い河川に移植成功させ、現在も各県水産試験場の大きな事業となっている。

ちなみに、漢字の「鮎」には戦況を占うことからきているようで「古事記」などによると、神功皇后が、三韓征伐の途中、肥前国(佐賀県松浦)で足を止められ、その時玉島の里の小川で「西方に地豊かに国富み、金銀財宝が山野に満ちた宝の国あり。これを討つにあらざれば熊襲(くまそ=九州南部の未開の民族)は征服し難し」と大いに気勢を上げ、戦況を占う目的で釣りをしたが、その時に釣れたのはやはりアユであった。

ところでこの時にアユを釣り上げたのは女性で、裳の糸を抜き取り、飯粒をエサにして釣ったようだ。

「鮎釣ると立たせる妹(いも=女性の事)が裳の袖(すそ)ぬれぬ」=大伴旅人。

                                                  神戸荒磯クラブ 上田 佳明

海のウリンボウ「イサギ」  平成6年6月号掲載

 魚は釣れないーいや、つれなくなったと言われて久しいが、石器時代ならともかく、人間も増えてきて需要も伸び、大量に「盗る」技術が飛躍的に進むと、昔ばなしのように海の資源は無尽蔵といかなくなって当たり前、遅まきながら「海の牧場」を作って牛や豚なみに魚を作ろうというわけだが漁業関係者ばかりでなく、ささやかに釣りを趣味とする私たちも魚が増えることはもろ手を上げて賛成だ。さて、このように魚と切ってもきれないジパングーその伝説や民話、生態などなど、立ち読み、耳学間のカクテルでお届けいたします。

梅雨のシーズンを迎えた6月ーその期間は約1ヶ月で、その経過は年によって大きく変わるが、大きく分けて、前期、中休み、後期ということになる。前期の雨は比較的女性的(現在ににあてはまるかどうかは疑問)でおとなしいが、後期の雨はアウトロー的で、大雨の被害はほとんどこの時期のようだ。今が食べごろ釣り頃のイサギ。チビッ子時代は、イノシシの子供(ウリンボウ)とよく似た縦ジマがある。暗褐色3本のストライプで、このストライプ、海のでは暗白帯に光って見えるそうだ。

その魚体をパロディ化して、前脚と後ろ脚、しっぽをつけたら、まさに(海のウリンボウ)に変身するわけで、実際そう呼ばれている。陸のウリンボウも、海のウリンボウもお遊びは上手で、釣りでこの群れに出会うと針外しに困る。まるでいちびっているように掛かってきて大弱りした経験を持っておられる人も多いことだろう。例年この時期になると紀州・四国路あたりで連日2〜3ケタ釣りで人気を呼んでいるが、今年はどうだろうーか。

このイサギ、体長20センチくらいになるとウリンボウを卒業してシマ模様は消滅してしまう。こうなるとそんなに群れは作らず沖合いの根を根城にして、日中は海底近くをゆっくり遊泳したり岩陰や割れ目に隠れ、夜になるとエサを捜しに出かけるから夜釣りは理にかなっている。初夏の頃、静かな内湾で黒ずんだイサギを見かけないだろうか、これは恋愛中の婚期色。イサギの場合、オスが早熟でヤル気マンマンだが、メスの卵巣は未成熟なのでオスは約1ヶ月待ちぼうけ暴発」できない自然のオキテにじっと我慢するわけだ。

和歌山では、鍛冶屋さんが、骨をノドに刺し、苦しんだあげく死んだことから「カジヤゴロシ」の別名で呼ばれているくらい骨が硬いから注意。いずれにせよ「ツユイサギ」、「ムギワライサギ」と言われ、今が旬でモテモテ、反対に「ムギワラダイ」とさげすまれ、産卵が終わって一番まずい頃にあたるマダイー王者不遇の初夏でもある。

神戸荒磯クラブ  上田 佳明